•谷繁流配球とは?
•1試合分の配球を全て言う訓練
•ストライクがとれるキャッチング
•キャッチャーがミットを動かす理由?
この記事では、ベイスターズ、ドラゴンズでキャッチャーとして活躍された谷繁元信さんの谷繁流 キャッチャー思考 当たり前の積み重ねが確固たる自信を生む [ 谷繁 元信 ]を紹介します。
本書では「ピッチャーとの関係づくり」「配球」「キャッチャーの技術」「キャッチャーの面白さ」など、谷繁さんが現役生活27年で得たキャッチャーに関するあらゆることが書かれています。
その中から気になった「配球」について2点、「キャッチャーの技術」について2点紹介します。
目次
谷繁元信とは
現役
横浜
谷繁さんは1970年生まれの広島出身です。島根県の江の川高校から1988年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズに入団します。
高卒1年目から1軍にフル帯同し、80試合に出場します。
1993年には大矢さんがバッテリーコーチに就任し、キャッチャーの全てを教わります。
1996年に大矢さんが監督に就任してからは、積極的に起用されるようになります。打撃も良くなり初めて3割打ちます。
1997年には2ケタ本塁打を放ち、リードでも成長を遂げます。
そして1998年には正捕手として、ベイスターズ38年ぶりの日本一に貢献します。この年はベストナイン、ゴールデングラブ賞、そして佐々木投手と最優秀バッテリー賞を受賞します。
中日
2001年オフにはメジャー移籍を目指しますが、断念し中日へ移籍します。移籍後も攻守両面でチームの中心として活躍します。
2004年には落合監督が就任し、リーグ優勝を果たします。この年は川上投手と最優秀バッテリー賞を受賞します。
2006年には第1回WBCの日本代表に選ばれています。この年ドラゴンズはリーグ優勝をし、谷繁選手はゴールデングラブ賞、川上投手と再び最優秀バッテリー賞を受賞します。
2007年はリーグ優勝を逃しますが、クライマックスシリーズを勝ち抜き、53年ぶりの日本一を果たします。また、ゴールデングラブ賞を受賞します。
2009年には脅威の守備率10割(無失策)を達成し、ゴールデングラブ賞を受賞します。
2010、2011年とリーグ優勝を果たします。2011年はゴールデングラブ賞、吉見投手と最優秀バッテリー賞を受賞します。
2012には2年連続でゴールデングラブ賞を受賞します。2013年には43歳で通算2000安打を記録します(史上44人目)。
2014年には落合監督の推薦で、選手兼任監督に就任します。またこの年には、プロ1年目から26年連続本塁打を記録します(当時NPB新記録)
2015年は監督兼選手となります。また、連続本塁記録を27年連続に更新します。NPB最多となる3021試合出場を記録します。そしてこの年をもって27年間の現役生活を終えました。
監督、解説者
2014年は選手兼任監督、2015年は監督兼選手、2016年は専任監督としてドラゴンズの指揮を3年間とります。
2014年は4位、2015年は5位、2016年は6位と3年連続Bクラスに低迷します。2016年は責任をとり、8/9をもって退任します。
監督退任後は解説者や評論家として活動されています。
内容
配球
谷繁流配球とは?
キャッチャーの配球が良いとか、悪いとかよく聞きますが配球とは何でしょうか?
谷繁さんが考える配球とは、試合状況•心理状態も踏まえた上で、バッターが打つ確率を少しでも下げるための戦略を組み立てることです。
例えばバッターがアウトローの苦手コースを2割打つとしたら、その確率を1割5分に下げる努力をすることです。
これが谷繁さんの考える配球です。
この配球を実践するために、ピッチャーを活かすこと、バッターのデータを叩き込むこと、実践での経験を積む必要があるんですね。
1試合分の配球を言う訓練
キャッチャーにとって欠かせない訓練に記憶力の訓練があります。
データや過去の試合の経験を思い出し、実戦で活かせなければなりません。
谷繁さんは、大矢バッテリーコーチに「一試合分の配球を1回から9回まで何も見ず全部言えるようにしろ」と言われたことがありました。
1試合が120球で終わったとしたら、その120球の球種•コースを全て言えということです。普通の人には考えられないようなトレーニングですよね。
谷繁さんも最初は半分ぐらいしか言えなかったそうですが、続けていくうちにほぼ全て言えるようになりました。
ベイスターズで優勝した98年のあたりには、ファウルがどこに飛んだかまで覚えていたそうです。
また、思い出すのにも最初は一時間くらいかかっていましたが、ベテランになってからは15分もあればすべて空で言えるようになったそうです。
現役時代はずっと訓練していました。
監督となってからは、ドラゴンズのキャッチャーにも練習させていたそうです。この訓練ができてないキャッチャーは2軍に落としていました。
それぐらい実践に役立つ練習だということなんですね。
キャッチング
ストライクがとれるキャッチング
ストライクがとれるキャッチングとは何でしょうか?
それはズバリ、「座る位置を前にすること」です。前側に座ることで捕球するポイントも前側になります。審判はベースの上を通ったタイミングを基準に判定していますが、人なので捕球位置による錯覚はあります。そのため球がストライクゾーンぎりぎりをかすめたときに、ストライクを取ってもらえやすくなるのです。
このような理由から、後ろで捕球するよりも前で捕球するほうがストライクがとってもらいやすくなるのです。
また、前の方がワンバウンドの処理もしやすいという利点もあります。
前に座ることで、バットが後頭部に当たるのが怖くないのかと思いますが、谷繁さんはそれよりもストライクがボールと判定される方が怖いそうです。
これぞキャッチャーの鏡ですね。
ミットを動かすのはなぜ?
中継を見ていると、キャッチャーが捕球前にミットを動かしているのを見たことがあると思います。なぜ動かすのでしょうか?
それには以下のような理由があります。
- ボール球をストライクに見せたいから
- タイミングをとりたいから
1つ目の「ボール球をストライクに見せたいから」は際どいところだとストライクにしたいという意識が働くみたいです。しかし、動かしてるということはボール球なんだろうなと審判は思うため、基本は動かさない方がいいです。
2つ目の「タイミングをとりたいから」は捕球しやすくするためです。キャッチする前にミットを降ろすキャッチャーが多いです。キャッチャーの捕球はしやすくなりますが、ピッチャーにとっては的が消えるため投げづらくなってしまいます。
谷繁さんもミットを動かしていました。ただし、ピッチャーがこっちを見ている時はミットを見せていたそうです。こうすることでピッチャーからはミットが動いていないように見えるため、投げやすくなります。
またミットを動かすときは下げるのではなく、手前に引くようにしていたそうです。なぜなら手前に引くと奥行きしか変わらないため、ピッチャーからミットを動かしてるように見えにくいからです。
キャッチング一つをとってもこのような工夫があるのですね。最近はフレーミング(ストライクに見せる技術)もキャッチャーの能力として注目されています。キャッチャーによるキャッチングの違いも中継を見ながら確認したいですね。
まとめ
谷繁元信さんの谷繁流 キャッチャー思考 当たり前の積み重ねが確固たる自信を生む [ 谷繁 元信 ]を紹介しました。
紹介した4点をまとめます。
- 配球とは、試合状況•心理状態も踏まえた上で、バッターが打つ確率を少しでも下げるための戦略を組み立てること。
- 1試合分の配球を全て言える記憶力が大事
- 前側に座ることでストライクをとってもらえる
- ミットを動かすのは「ボール球をストライクに見せたいから」「捕球のタイミングをとりたいから」
今回紹介した以外にも以下のような内容があります。
•ハマの大魔神の信頼を得た方法
•日常生活で「判断力」を磨くには?
•打ち取るのが難しかったバッター
•日本シリーズ完全試合、最後のイニングの配球-山井から岩瀬へ-
•古田流捕球と谷繁流捕球の違い
•出身ポジションによる監督の特徴
本書はキャッチャーについて深く知れる内容でした。特にキャッチングの際に手前に引いてることや、座る位置については全く知らなかったので興味深かったです。
谷繁さんの27年間の経験がぎっしり詰まっています。キャッチャーの面白さがわかると思うので、ぜひ読んでみてください。
ご覧いただき、ありがとうございました!